気がつくと、一日の大半を座って過ごしていませんか
定年後、家で過ごす時間が増えた人は少なくないでしょう。
朝食を済ませて、新聞やスマートフォンを見る。テレビを見たり、趣味を楽しんだり、少し横になったりする。
気がつくと、あまり外へ出ないまま夕方になっていた。
そんな一日もあるかもしれません。
仕事をしていたころは、通勤するだけでも歩き、職場の中でも自然に体を動かしていました。ところが退職すると、決まった時間に出かける理由がなくなります。
その結果、以前より座っている時間が増えていくことがあります。
もちろん、家でゆっくり過ごすことが悪いわけではありません。
長く働いてきたのですから、自分の時間をゆったり楽しむことも、人生後半の大切な豊かさです。
ただ、「運動不足だから何か始めなければ」と考える前に、一度だけ見直してみたいことがあります。
それは、一日にどれくらい運動しているかではなく、どれくらい長く動かない時間が続いているかです。
「運動をしていない」と「動いていない」は少し違う
健康のためと聞くと、ウォーキングや体操、ジムなどを思い浮かべる人も多いでしょう。
もちろん、それらを楽しめる人にとっては素晴らしい習慣です。
しかし、毎日決まった運動をすることだけが、体を動かす方法ではありません。
たとえば、座ってテレビを見ていた人が立ち上がり、お茶を入れる。
窓を開けて、外の様子を見る。
洗濯物を取り込む。
近所の店まで買い物に出かける。
友人に会うために外へ出る。
こうした何気ない動きも、暮らしの中にある大切な「動く時間」です。
私は長く整体の現場で多くの人と接してきましたが、特別な運動をしているかどうかだけではなく、日常生活の中に自然な動きがあるかということも大切だと感じてきました。
毎日一時間の運動をしていても、そのほかの時間をほとんど座って過ごしている人もいます。
反対に、運動らしい運動はしていなくても、家事や買い物、趣味、地域活動などで、こまめに動いている人もいます。
人生後半の体づくりは、「頑張る時間」を増やすことだけではありません。
まずは、動かない時間が長く続きすぎていないかを見てみることから始めてもよいのです。
定年後は「動く理由」がなくなりやすい
仕事をしているころは、意識しなくても生活の中に役割がありました。
決まった時間に起きる。
着替える。
職場へ向かう。
人と会う。
用事を済ませる。
仕事そのものが、生活に一定のリズムをつくっていた人もいるでしょう。
定年後は、そのリズムが大きく変わります。
自由な時間が増えることは、もちろん悪いことではありません。
むしろ、これまでできなかったことに取り組める時期でもあります。
しかし自由だからこそ、「今日は何をしようか」と考えているうちに、一日が終わってしまうこともあります。
外へ出る理由がない。
誰かと会う予定もない。
急いで済ませる用事もない。
そうなると、自然に座って過ごす時間が長くなっていきます。
仕事をしていたころとは違い、定年後は自分で一日のリズムをつくっていく必要があります。
朝の時間をどう過ごすかによって、その後の活動量や気分が変わることもあります。定年後の朝の過ごし方|人生後半の一日を気持ちよく始める習慣では、一日の始まりを無理なく整える考え方について紹介しています。
ここで大切なのは、「もっと頑張って外出しなければ」と自分を追い込むことではありません。
むしろ、自分が少し動きたくなる理由を暮らしの中につくることではないでしょうか。
「用事」があると、人は自然に動き始める
歩くことを習慣にしようと思っても、目的もなく毎日歩くのは意外と難しいものです。
ところが、「あのお店まで買い物に行く」「図書館で本を借りる」「友人に会う」となると、外へ出る理由ができます。
私は人生後半の運動習慣を考えるとき、「運動するために動く」よりも、「何かをするために動く」という考え方が続きやすいのではないかと思っています。
たとえば、こんな小さな目的があります。
- 少し離れた店まで買い物に行く
- 気になる本を図書館へ探しに行く
- 近所の公園まで季節の変化を見に行く
- 趣味の集まりに参加する
- 友人とお茶を飲む約束をする
- 地域の活動を少し見学してみる
ここには、健康だけではない意味があります。
外へ出れば、景色が変わります。
人と話す機会が生まれることもあります。
新しいことを知るきっかけになるかもしれません。
つまり、体を動かすことが、学びや人とのつながりにも自然につながっていくのです。
「外へ出ること自体が少し面倒になってきた」と感じる人もいるでしょう。その場合は、無理に運動を目的にする必要はありません。外に出るのが面倒になったら|人生後半に歩く習慣を続ける小さな工夫でも紹介しているように、自分なりの小さな目的を見つけることが、自然に動くきっかけになることがあります。
今回の記事が横断記事である理由も、ここにあります。
「動く」ということは、単に筋肉や体力だけの話ではありません。
暮らしのリズムを整え、心に変化をつくり、人とのつながりを生み出す入り口にもなります。
一度に長く動かなくてもいい
「座っている時間が長いなら、たくさん歩かなければいけない」と考える必要はありません。
体力や体調は、人によって違います。
持病がある人もいれば、膝や腰に不安を感じている人もいるでしょう。
大切なのは、今の自分の状態を無視して急に頑張ることではありません。
たとえば、テレビ番組が一区切りしたら、一度立ち上がってみる。
長く座っていたことに気づいたら、部屋の中を少し歩いてみる。
座りっぱなしになっていた時間を、ほんの少し区切る。
まずは、それくらいでもよいと思います。
「今日は何歩歩いたか」という数字だけを気にすると、できなかった日に自分を責めてしまうことがあります。
それよりも、「今日は一度外へ出られた」「座っていた時間の途中で何度か立ち上がった」と考えるほうが、暮らしの中に取り入れやすい人もいるでしょう。
座る時間を減らすより、暮らしを豊かにする
「座りすぎを解消しなければ」と考えると、少し窮屈になることがあります。
だから私は、座る時間を無理に減らすことを目標にするより、動きたくなる暮らしをつくることを考えたいと思います。
読みたい本があれば、図書館へ行く。
育てたい植物があれば、庭やベランダへ出る。
学びたいことがあれば、講座へ参加してみる。
会いたい人がいれば、連絡してみる。
こうした「やりたいこと」が増えると、結果として家の中だけで過ごす時間が少し変わってくることがあります。
体のために無理をするのではなく、暮らしを楽しんでいたら自然に動く時間が増えていた。
人生後半には、そんな形があってもよいのではないでしょうか。
体を動かすことを目的にするだけでなく、「どこへ行きたいか」「何をしたいか」を考えてみる。すると、体を動かす理由は意外なところから見つかるかもしれません。
今日、座っていた時間を少し振り返ってみる
今日一日を思い出してみてください。
朝から晩まで、どんな時間を過ごしたでしょうか。
長く座っていた時間はありましたか。
それとも、思った以上に家の中で動いていたでしょうか。
大切なのは、反省することではありません。
今の自分の暮らしを知ることです。
人生後半は、体のためだけに生活する必要はありません。
けれど、これからも行きたい場所へ行き、会いたい人に会い、好きなことを続けるためには、自分の体と付き合っていくことも大切です。
その第一歩は、特別な運動を始めることではないかもしれません。
まずは、長く座っていたことに気づく。
そして一度、立ち上がってみる。
窓の外を見る。
少しだけ歩く。
そんな小さな動きから、暮らしの景色が少し変わることもあります。
「整える → 軽くなる → つながる」という流れは、何か大きな決断をしたときだけに生まれるものではありません。
一度立ち上がるという小さな行動から、新しい場所や人とのつながりが始まることもあるのです。
今日、もし長く座っていたことに気づいたなら。
少しだけ立ち上がってみませんか。
それだけでも、これからの暮らしを整える小さな一歩になるかもしれません。
この記事は一般的な健康情報としてお届けしています。医療行為や診断を目的としたものではありません。強い痛みや息切れ、めまいなどの不調がある場合や、持病がある場合は、無理をせず医療機関や専門家にご相談ください。
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この記事を書いた人
70’spapa
43年間、整体の現場で多くの人生に寄り添う中で、 体だけではなく、心や暮らし、人とのつながりが人生を支えることを学んできました。
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