定年後の朝は「何をするか」より「どう始めるか」
定年を迎えると、それまで当たり前だった朝の風景が変わります。
決まった時間に起きて、着替えて、仕事へ向かう。そんな生活がなくなると、「朝は何時に起きればいいのだろう」「予定がない日は、つい昼まで寝てしまう」と感じることもあるでしょう。
私は、定年後の朝に必要なのは、現役時代と同じように忙しくすることではないと思っています。
むしろ大切なのは、「今日も一日が始まった」と自分の中で区切りをつけることです。
朝の過ごし方が少し整うと、その後の食事や外出、人との会話、趣味の時間などにも自然とつながっていきます。
定年後は仕事という大きな予定がなくなるからこそ、自分で一日のリズムをつくることが大切になります。
定年後に朝のリズムが大切になる理由
仕事をしていた頃は、目覚まし時計や通勤時間が自然と生活のリズムを作ってくれていました。
ところが定年後は、その外側から与えられていた時間割がなくなります。
もちろん、朝寝坊をする日があっても構いません。毎日きっちり同じ時間に起きなければならない、という話でもありません。
ただ、起きる時間も寝る時間も日によって大きく変わり、昼間の活動量も少なくなっていくと、一日のメリハリがつきにくくなることがあります。
厚生労働省の睡眠に関する情報でも、規則正しい生活や光を浴びるタイミングは、睡眠と覚醒のリズムと関係するとされています。特に起床後から午前中に光を浴びることは、体内時計の調整に役立つとされています。
だからといって、朝から予定を詰め込む必要はありません。
「起きる」「光を浴びる」「身支度をする」「何か食べる」「少し動く」。
このくらいの小さな流れでも、一日の始まりとして十分です。
まずはカーテンを開けることから
私がおすすめしたい朝の習慣の一つが、起きたらカーテンを開けることです。
朝起きて、布団の中でスマートフォンを眺め続けるのではなく、まず窓を開けて外の明るさを感じてみる。
それだけでも、「夜から朝へ」という切り替えを意識しやすくなります。
厚生労働省の 「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 でも、睡眠時間だけでなく、生活習慣や睡眠環境を見直すことが大切だとされています。
朝の光を浴びるために、必ず散歩へ出なければならないわけではありません。
天気が良ければベランダに出る。窓辺でお茶を飲む。ゴミを出すついでに少し外の空気を吸う。
そんな程度から始めてもいいのです。
なお、目や皮膚などの状態によって強い光を避ける必要がある方は、無理に日光を浴びず、医師の指示を優先してください。
朝の身支度には「今日」を始める力がある
定年後、意外と大切なのが朝の身支度です。
「今日はどこにも行かないから、パジャマのままでいい」。そんな日もあるでしょう。
もちろん、毎日きちんとした服に着替える必要はありません。
それでも、顔を洗い、歯を磨き、髪を整え、部屋着に着替える。
こうした小さな行動には、一日の区切りをつくる意味があります。
私自身も、朝の身支度をすると気持ちのスイッチが入りやすいと感じます。
定年後は「誰かに決められた予定」が少なくなるからこそ、自分で自分に小さな始業の合図を出す。
それくらいの感覚でいいのではないでしょうか。
朝食は「きちんと食べる」より生活のリズムを意識する
朝食についても、毎朝完璧なメニューを用意する必要はありません。
食欲がない日や、起きる時間が遅くなった日は、無理に大量に食べる必要もありません。
一方で、朝食をとることは一日の生活リズムを考えるきっかけになります。
農林水産省も、朝食や朝の光を生活リズムを整える要素として紹介しています。
ご飯、パン、卵、魚、豆腐、乳製品、野菜など、自分が無理なく食べられるものを組み合わせれば十分です。
「朝食を豪華にする」ことではなく、朝になったら何かを食べるという習慣をつくることに目を向けてみてください。
食欲や体調に変化が続いている場合は、単なる生活習慣の問題と決めつけず、医療機関などに相談することも大切です。
朝に少し体を動かす
定年後の朝に、もう一つ取り入れやすいのが軽い運動です。
ここでも「毎朝30分歩かなければ」と考える必要はありません。
- 庭やベランダで少し体を動かす
- 近所を短時間歩く
- ラジオ体操をする
- 家の中を歩いてみる
- 椅子に座ったまま足を動かす
体調に合わせて、できることから始めれば十分です。
厚生労働省も、運動は一度だけ頑張るより、無理のない強さで習慣的に続けることが大切だとしています。
私が整体の現場で感じるのも、「運動をする人」と「運動をしない人」という二つに分けるより、日常の中で少しでも体を動かしているかどうかを見る方が現実的だということです。
朝から頑張りすぎて疲れてしまえば、続きません。
「少し動いたから今日は十分」。そんな日があっていいのです。
朝に「今日の予定」を一つだけ決める
定年後の生活で難しいのは、時間がないことではありません。
むしろ、時間がたくさんあることです。
予定が何もない日が続くと、朝起きても「今日は何をしよう」と考えているうちに午前中が終わってしまうことがあります。
そこでおすすめしたいのが、朝のうちに「今日やることを一つだけ決める」ことです。
- 本を10ページ読む
- 近所のスーパーへ買い物に行く
- 庭やベランダを少し整える
- 友人に電話する
- 料理を一品つくる
- 午後に散歩へ出る
- 興味のあることを30分調べる
大きな目標でなくて構いません。
「今日はこれをする」と一つ決めるだけで、朝と昼の間に小さな目的が生まれます。
定年後の人生では、仕事の代わりになる大きな予定を無理につくる必要はありません。
一日の中に、小さな楽しみや用事を置いていく。
その積み重ねが、自分らしい生活のリズムになっていきます。
「朝活」を頑張らなくてもいい
最近は「朝活」という言葉をよく見かけます。
早起きをして運動をして、勉強をして、読書をして、朝から充実した時間を過ごす。
それは素敵な過ごし方ですが、全員に必要なものではありません。
定年後の朝まで「生産性」を求めなくてもいいのです。
朝のコーヒーをゆっくり飲む。新聞を読む。音楽を聴く。家族と話す。
何もしない時間を少し楽しむ。
そうした時間も、人生後半には大切なものです。
現役時代は「時間を有効に使わなければ」と考えがちでしたが、これからは時間を味わうことも暮らしの一部にしていいのではないでしょうか。
朝の過ごし方は「自分に合う形」でいい
朝が得意な人もいれば、ゆっくり動き出す方が合っている人もいます。
同じシニア世代でも、睡眠時間、体調、家族との暮らし方、仕事の有無などによって朝の形は大きく違います。
だから、「朝は何時に起きるべき」「朝はこれをしなければ」と決めつける必要はありません。
大切なのは、自分の生活の中に朝の目印をいくつかつくることです。
起きたらカーテンを開ける。
顔を洗って着替える。
朝食をとる。
少し体を動かす。
今日やることを一つ決める。
全部できなくても大丈夫です。
この中から一つ、二つを選ぶだけでも構いません。
明日の朝からできる小さな習慣
定年後の朝を変えるために、大きな目標を立てる必要はありません。
明日の朝、まずカーテンを開けてみる。
そして顔を洗い、いつもの朝食をとる。
余裕があれば、家の周りを少し歩いてみる。
最後に「今日はこれをしよう」と一つだけ決める。
これだけでも、一日の始まり方は少し変わります。
朝の時間は、何かを成し遂げるためだけにあるのではありません。
これからの一日を、自分のペースで始めるための時間です。
私自身、人生後半になって感じるのは、若い頃のように予定を詰め込むことよりも、「今日を気持ちよく始められた」という感覚の方が大切になってきたということです。
定年後だからこそ、自分の朝を自分で選べます。
忙しかった頃にはできなかった、ゆっくりした朝も楽しめます。
朝日を感じる。おいしく朝食をとる。少し体を動かす。誰かと話す。
そんな小さな積み重ねから、人生後半の一日は始まります。
ご注意ください
この記事は一般的な健康情報としてお届けしています。医療行為や診断を目的としたものではありません。強い痛み、不調、持病がある場合は、無理をせず医療機関や専門家にご相談ください。日光を避ける必要がある疾患などがある場合は、医師の指示を優先してください。また、朝の習慣は年齢や体調、生活環境に合わせ、無理のない範囲で取り入れてください。生活習慣を見直しても眠れない、眠っても休養感がない、日中に強い眠気が続くなど、日常生活に影響する状態が続く場合は、医療機関への相談をおすすめします。
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この記事を書いた人
70’spapa
43年間、整体の現場で多くの人生に寄り添う中で、 体だけではなく、心や暮らし、人とのつながりが人生を支えることを学んできました。
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