「どっこいしょ」が増えたら、体の変化に気づくきっかけかもしれない
以前は何も考えずに立ち上がっていたのに、最近は「どっこいしょ」と声が出る。
椅子から立つときだけでなく、歩き始めるときや階段を上るときにも、以前より少し体が重く感じる。
こうした変化があると、「もう年だから仕方がない」と考えてしまう人もいるかもしれません。
でも、私は整体の現場で長く人の体を見てきて、こうした小さな変化は、単なる年齢の問題として片づけないほうがいいと感じています。
特に気をつけたいのが、歩くときの「足の上がり方」です。
大きな段差なら誰でも意識しますが、カーペットの端や電気コード、ほんの少しの床の段差などに足が引っかかるようになったときには、歩く動きのどこかに変化が出ている可能性があります。
「転んだわけではないから大丈夫」と思わずに、まずは自分の歩き方を少し観察してみる。
それが、これからの体を考える最初のきっかけになることがあります。
下半身の筋肉は「貯金」があるから、衰えに気づきにくい
人生後半の体を考えるとき、下半身の筋肉はとても大切です。
太ももやお尻などには大きな筋肉があります。
若い頃から歩いたり、運動したり、体を使ってきた人は、それまでに蓄えてきた筋肉をある意味「貯金」のように持っています。
そのため、少しくらい筋肉が落ちても、日常生活ではそれほど困らないことがあります。
ここが、下半身の変化に気づきにくいところです。
「まだ普通に歩ける」「階段も上れる」と思っているうちにも、少しずつ体の余裕が減っていることがあります。
そして、ある程度まで余力が落ちてきたところで、初めて「どっこいしょ」や「足が重い」「歩きにくい」といった感覚として現れてくる。
つまり、自覚できた時点では、すでに体の余裕がかなり少なくなっている場合もあるのです。
だからこそ、まだ大きな不自由を感じていない段階で、日常の動きを一度見直しておくことが大切だと私は考えています。
足が上がらないのは、太ももだけの問題ではない
「足が上がりにくい」と聞くと、まず太ももの筋肉が弱くなったのではないか、と考える人が多いと思います。
もちろん太ももの働きも大切です。
ただ、歩くときにもう一つ見ておきたいのが、すねの前側にある前脛骨筋です。
前脛骨筋は、足首を動かして、歩行中につま先が床に引っかからないように足先を持ち上げる働きに関わっています。
この部分が弱くなっていたり、疲労が蓄積していたりすると、歩いているときに足先が十分に上がらず、ほんの少しの段差でも引っかかりやすくなることがあります。
たとえば、カーペットの端や床に置かれたコード。
若い頃なら何気なくまたげていたものに、最近「ガクッ」と足を取られる。
こうした小さなつまずきは、単に「注意力が落ちた」と考えるだけではなく、足を前に運ぶ動きそのものを見直すきっかけになるかもしれません。
整体の現場では、私は太ももだけを見るのではなく、足首からすね、膝、股関節、そして体全体がどう連動しているのかを見るようにしています。
足は単独で動いているわけではありません。
だから、「足が上がらないから、足だけを鍛えればいい」と単純に考えないことも大切なのです。
「つまずく」が増えたら、歩き方全体を見直してみる
つまずきが増えたときに、まず確認してほしいのは「どこで引っかかっているのか」です。
平らな場所なのか、小さな段差なのか。
歩き始めなのか、しばらく歩いた後なのか。
左右どちらかの足だけなのか、それとも両方なのか。
こうしたことを少し意識するだけでも、自分の歩き方を客観的に見ることができます。
また、疲れてくると足が上がりにくくなる人もいます。
朝は問題ないのに、夕方になると足が重くなる。
長く歩いた後だけ、つまずきやすくなる。
このような場合は、筋力だけではなく、毎日の疲労や体の使い方も関係している可能性があります。
「歩けているから大丈夫」ではなく、以前と比べて歩き方がどう変わったかを見る。
人生後半では、この視点が意外と大切です。
足だけを鍛える前に、普段の動きを見直してみる
足が上がりにくくなると、「筋トレをしなければ」と考える人もいるでしょう。
もちろん、体力や筋力を維持するために運動することは大切です。
ただし、今まであまり運動をしていなかった人が、いきなり強い運動を始めればいいというものでもありません。
まずは普段の生活の中で、どのように立ち、歩き、座り、方向を変えているのかを見てみましょう。
歩く距離だけでなく、歩き始めの一歩。
椅子から立つときの動き。
階段を上るときに、左右の足をどう使っているか。
こうした何気ない動きの中に、体の変化が表れていることがあります。
運動を増やすことだけを考えるのではなく、まず「今の自分の体をどう使っているのか」を知る。
私は、人生後半の体づくりでは、この順番も大切だと思っています。
「年だから仕方ない」と決めつけない
年齢を重ねれば、若い頃とまったく同じように体を動かせなくなるのは自然なことです。
だからといって、すべてを「年齢のせい」にしてしまう必要はありません。
少し歩幅が狭くなった。
足が重く感じる。
小さな段差につまずく。
立ち上がるときに「どっこいしょ」が増えた。
こうした変化を、「まだ生活できているから問題ない」と放置するのでもなく、「もう年だから」と諦めるのでもない。
その間にあるのが、今の体を知って、できる範囲で整えていくという考え方です。
体の変化は、大きな不調になってから突然始まるとは限りません。
日常の小さな動きの変化として、先に気づくこともあります。
急に足が上がらなくなったときは、年齢のせいにしない
ここは、普段のゆっくりした体の変化とは分けて考える必要があります。
もし、これまで問題なく歩けていたのに、急に片側の足が動かしにくくなったり、力が入りにくくなったり、歩き方が明らかに変わったりした場合は、「年齢のせい」と自己判断しないでください。
しびれや強い痛み、ろれつが回りにくい、顔や腕にも異常があるなど、ほかの症状を伴う場合も同様です。
こうした急な変化については、整体や運動だけで判断せず、医療機関など専門家に相談することが大切です。
日常的な体の衰えと、医療的な確認が必要な変化は、同じものではありません。
歩ける体を残すことは、人生後半の自由を残すこと
歩くことは、単に足を動かす運動ではありません。
自分で買い物に行く。
人に会いに行く。
趣味の場所へ出かける。
旅行をする。
ちょっと気になる店まで歩いてみる。
こうした人生後半の楽しみの多くは、「自分で歩いて移動できること」とつながっています。
だから私は、歩ける体を残すことは、そのままこれからの自由を残すことでもあると思っています。
「足が上がらない」という変化は、小さなことに見えるかもしれません。
でも、その小さな変化に気づいたときに、自分の歩き方や体の使い方を一度見直してみる。
それだけでも、これからの体との付き合い方は変わってくるかもしれません。
まずは今日、歩くときに「自分の足先はちゃんと上がっているだろうか」と、少しだけ意識してみてください。
人生後半の体は、無理に若返らせるものではなく、これからの暮らしに合わせて整えていくもの。
私はそう考えています。
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この記事を書いた人
70’spapa
43年間、整体の現場で多くの人生に寄り添う中で、 体だけではなく、心や暮らし、人とのつながりが人生を支えることを学んできました。
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