話し上手でなくても、人との関係は育つ
人とつながりたい気持ちはある。でも、いざ誰かと話す場になると、何を言えばいいのか分からなくなる。
そんなふうに感じている方は、少なくありません。
若いころは仕事や子育ての用事があり、自然に会話が生まれていたかもしれません。ところが定年後や子育て後は、用事が減るぶん、会話のきっかけも少なくなります。
そこで「もっと明るく話さなければ」「面白い話題を出さなければ」と思うと、人と会うこと自体が重くなってしまいます。
けれど、人とのつながりは、話し上手だけが作るものではありません。静かに聞いてくれる人がいるから、場がやわらぐこともあります。
70代に限らず、人生後半の関係づくりは、若いころのように勢いで広げなくてもいいのだと思います。まずは「上手に話す」より、「感じよく聞く」から始めてみる。それだけでも、人との距離は少し近づきます。
聞き役から始めると、関係が軽くなる理由
会話が苦手な人ほど、「自分が何か話さなければ」と考えがちです。
でも実際には、自分の話を聞いてもらいたい人も多いものです。相手の話に耳を向けることは、立派な関係づくりです。
- 無理に話題を探さなくていい相手の言葉を受け止めるだけで、会話は続きやすくなります。
- 自分を大きく見せなくていい経験自慢や知識比べになりにくく、自然体でいられます。
- 相手が話しやすくなる急かさず聞いてくれる人の前では、相手も少し肩の力を抜きやすくなります。
- 短い会話でも満足感が残る長く話さなくても、「少し人と関われた」という感覚が残ります。
私も整体の現場で、よく感じてきたことがあります。体の話をしているうちに、暮らしのこと、家族のこと、最近気になっていることへ話が移っていくのです。
そのとき、こちらが立派な答えを出すより、「そうだったんですね」と耳を傾けるだけで、表情が少しゆるむ方がいます。人は、正解をもらう前に、まず聞いてもらうことで落ち着くことがあるのだと思います。
人生後半のつながりは、にぎやかでなくてもかまいません。
心地よい聞き役になる小さなコツ
聞き役といっても、特別な技術はいりません。大事なのは、相手を変えようとせず、会話の温度を急に上げすぎないことです。
あいづちは短くていい
「そうなんですね」「それは大変でしたね」「なるほど」くらいで十分です。
大きな反応をしようとすると疲れます。自分の声の高さや表情も、いつものままでかまいません。
最後の言葉を少し拾う
相手が「最近、庭の草取りが大変で」と言ったら、「草取り、大変ですよね」と返す。
相手の言葉を少しだけ繰り返すと、「聞いてくれている」と伝わりやすくなります。
質問は一つだけでいい
質問を次々にすると、相手によっては詰められているように感じることがあります。
「それはいつ頃からですか」「どんなところが好きなんですか」など、一つ聞いたら、あとは待つくらいでちょうどいい日もあります。
沈黙を怖がりすぎない
会話が止まると、失敗したように感じるかもしれません。
でも、少しの沈黙は自然なものです。お茶を飲む、景色を見る、軽くうなずく。言葉がない時間も、関係の一部です。
会話が生まれやすい場所を選ぶ
会話が苦手な方は、いきなり初対面同士で盛り上がる場に行くより、会話しなくても過ごせる場所から始めるほうが続きやすいです。
- 図書館や本屋静かに過ごせるので、無理に話さなくても場にいられます。
- 散歩道や公園会釈や短いあいさつから始めやすく、会話を急がなくてすみます。
- 地域の体操や講座同じ目的で集まるため、話題を探しすぎなくても自然な一言が出やすくなります。
- 喫茶店や小さなお店「ごちそうさま」「今日は寒いですね」など、短い言葉を交わしやすい場所です。
最初から友達を作ろうとしなくても大丈夫です。まずは「同じ場所に何度か行ってみる」だけで、顔なじみが少しずつ増えていきます。
会話は、仲良くなるための試験ではありません。暮らしの中で、人とすれ違うための小さな橋のようなものです。
聞き役にも、心地よい距離感が必要
聞き役でいることは、何でも受け止めることではありません。
毎回長い愚痴を聞いて疲れてしまう。断れずに誘いを受けてしまう。そうなると、人とのつながりが重荷になります。
- 疲れている日は、短いあいさつだけにする
- 長話になりそうなら「そろそろ失礼します」と区切る
- お金、契約、勧誘の話はその場で決めない
- 住所、家族構成、留守の時間などはすぐに話さない
- LINEや電話番号の交換は急がない
- 違和感がある誘いは、一度持ち帰る
もし交流アプリやマッチング系のサービスを使う場合は、本人確認の有無、料金、退会方法、個人情報の扱い、詐欺対策、写真の公開範囲を確認しておきましょう。迷うときは、家族や信頼できる人に相談してからでも遅くありません。
人との関係は、近づけばよいというものではありません。自分が疲れすぎない距離を守ることも、長くつながるための大切な工夫です。
今日からできる聞き役の練習
会話の練習というと、少し構えてしまうかもしれません。けれど、日常の中でできる小さなことからで十分です。
- 店員さんに「ありがとうございます」と少しはっきり言う
- 散歩中に会釈だけしてみる
- 相手の話を最後までさえぎらずに聞く
- 「そうなんですね」と一度返してみる
- 会話が続かなくても、自分を責めない
一日一回、短い言葉を交わせたら、それで十分な日もあります。
人付き合いが得意な人のまねをしなくてもいいのです。静かに聞く、穏やかにうなずく、必要なところで少しだけ言葉を返す。そこに、その人らしい温かさが出ます。
聞き役は、控えめな人の強みになる
会話が苦手だと、自分は人付き合いに向いていないと思ってしまうことがあります。
でも、話すのが得意な人ばかりでは、関係は少し忙しくなります。聞いてくれる人、急がせない人、静かにそばにいられる人がいるから、場が落ち着くこともあります。
長い会話より、感じのよい一言。大勢の友人より、無理なく会える顔なじみ。話し上手より、また会っても疲れない人。
そんな関係を少しずつ育てていけば、これからの暮らしは少し整い、心も軽くなっていきます。
まずは次に誰かと会ったとき、相手の言葉を一つだけ丁寧に聞いてみる。聞き役から始まるつながりも、第二の人生にはよく似合うと思います。
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この記事を書いた人
70’spapa
43年間、整体の現場で多くの人生に寄り添う中で、 体だけではなく、心や暮らし、人とのつながりが人生を支えることを学んできました。
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